今回は「哲学ジャム+」として,ソポクレス『オイディプス王』(藤沢令夫訳)の一部を読んで意見交換をしました。読んだのは,第一エペイソディオン(エピソード)の冒頭からテイレシアス退場までのオイディプスとテイレシアスの問答。人間並みの知者と神的な知者との断絶の深さをみなさんがどう見るかというところに主宰者の興味がありました。テイレシアスは「わがうちに宿る真理こそ,この身を守る力なのだから。」(356行),「いやしくも真理というものが,何ほどかの力をもつかぎりは。」(369行)と語るが,Kさんから,「真理」と言われると違和感がある,「真実」の方が近いのではないかという疑問が発せられた。テイレシアスの言う「真理」の原語は「アレーテイア」あるいはその形容詞形だが,訳としては「真理」でも「真実」でも可能だ。Kさんが「真実」の方が近いと感じたのは,少し前に「真相」と訳されていること,つまり「実際に起こったこと」という意味で取ったからかもしれない。しかし「真理」となるとその出来事がなぜ起こったのかという原因をも含む意味合いがあるように思われる。テイレシアスの知はそのような真理を含む知であるが,オイディプスの知はあくまで人間並みの推理の知にとどまる。そういう2種の知の断絶が「真理」という訳に込められているように思われる。
内容については以上のことなどが話されたが,主宰者として意外だったのは語源的な説明がみなさんにとっては新鮮だったということ。プロロゴス(序)がプロローグの,エペイソディオン(幕・場)がエピソードの,コロス(歌舞団)がコーラスの,オルケストラ(歌舞団の舞台)がオーケストラの語源だということを知って,みなさんは自分たちがよく口にする言葉が遠く古代に繋がっているということに感慨深げな様子でした。
以上第23回の報告とします。次回は10月16日(火)の予定です。
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